敗けるもんかっ!・・・失敗は成功の元
最近は縄文石笛をよく作っているが、こいつが直径8㎜の貫通孔を6~7㎝もあけなくてはいけないので、手間暇がかかるのだ。
普通の工具では片側からだけで貫通できる深さではないので、両側から半分づつ孔を開けるのだけど、僅か数㎜の誤差で中間で孔がずれたりということもあるし、途中で固定用バイスが緩んで見当違いの方向に孔がずれていくこともある。
商品としては歩留りが悪いけど、作っていて面白いし、需要もけっこうあるのだ。
直径8㎜の孔が6㎝の長さで貫通している青森県出土の縄文石笛レプリカ。
五千年以上も前にこんな技術があったのだ。
なにより世界広しといえども、縄文時代出土の石笛レプリカを作っているのは他ならぬ、この俺、つまり「ぬなかわヒスイ工房」だけだから意欲も湧くというもの。
先週の日曜日なんかは、とても硬い泥岩で縄文石笛を作ろうとした時の失敗はガックリした。
泥岩といえども様々で、簡単に加工できるものもあれば今回のように難しいものもある。
日曜日の泥岩は、原石からプレートを作る時にも、その次の孔開け工程にもヒスイの倍は時間がかかった位に硬かったが、孔が貫通直前にガタンと大きな音がして、ドリルビットが折れて泥岩自体も二つに割れてしまった。
縄文石笛の失敗作の数々。左が日曜日に壊れた泥岩。
真ん中から割れた泥岩と、破断したドリルの先端。ドリルビットは中国製ということもあるけど、酷使したから疲労破断だろう。ビット供養しなきゃな。
イタリア人なら、大袈裟に頭を抱えて天を仰ぐ場面だが、俺はこんな時には淡々としていられるタイプだ。
こんな時に気持ちを切り替える呪文がある。
「敗けるもんかっ!」である。
これまで二隻の丸木舟を独力で作ったが、大枚はたいて買った10万円のチェーンソウがお釈迦になった時も、ひび割れで船首がパックリと割れた時も、何時だってこの呪文を唱えて何とか乗り越えてきたのだ。
お蔭で今回のような加工の難しい石材加工のコツも掴めた。
泥岩のモース硬度はヒスイより低いのだろうけど、今回の泥岩は切断も孔開けもヒスイよりずっと硬く感じる。
恐らく結晶構造や結晶の結合の関係だろうと思うが、硬度は低くくても硬く感じて加工し難い鉱物・・・例えば軟玉ヒスイ(ネフライト)などと同じで、それなりの工夫が必要といいうことだ。
どんな工夫かというと、それは企業秘密(笑)
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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