「太平洋奇跡の作戦 キスカ」・・・夏休み推薦映画
この時期になるとアリューシャン列島のキスカ島で起こった奇跡に想いを馳せる。
太平洋戦争開戦時と同時に、日本軍は南方戦線の陽動作戦とアメリカ領占領を目的とした北方のアリューシャン列島も占領した。
ところがミッドウエー海戦の惨敗から日米の形勢逆転・・・日本軍は南方戦線の防戦に手一杯となり、軍事的価値の少ないアリューシャン列島の占領地は孤立無援に陥った。
この夏にお勧めの映画が「太平洋奇跡の作戦キスカ」
サイパン、グアムの南方占領地では玉砕が続き、やがて米軍はアリューシャン列島にも兵力を向けた。
そして二千七百名の将兵が守るアッツ島玉砕し、隣りの五千二百名の将兵が守っているキスカ島が危うい・・・。
アッツを見捨ててキスカまで見殺しにするのか!という北方方面隊の懇願を受けて、連合艦隊は重い腰を上げてキスカ撤退の「ケ作戦」を実行した。
ケ作戦とは、乾坤一擲のケである。
勇ましい作戦名だが、じつの所、制空権と制海権が米軍下にある孤島の将兵救出は不可能に近い事は誰もが知っていた。
しかも米軍はレーダーを実戦配備していたので、日本軍が得意とする夜陰に紛れての作戦も通用しない戦況。
つまり建前としてのお役所仕事的な救出作戦・・・。
その時に指揮官として選ばれたのが、派手な戦績もなく退役寸前の「ヒゲの木村」こと木村中将。
ところが海軍内で昼行燈と陰口を言われていた木村中将は、行動は地味だけども、実は他人の評価を気にしない泰然自若にして沈着冷静なサムライ。
トレードマークのカイゼル髭が、後ろから見ると猫がサンマを咥えているみたいなので「ヒゲサンマ」と揶揄されていた(笑)
功名心に逸る猛将には絶体絶命の救出作戦は無理、なにより失敗が目に見えている作戦は誰もやりたがらないのだ。
キスカの将兵が絶体絶命なら、救出に向かう艦隊も全滅の危機・・・どうする木村中将!
米軍のレーダー網をかいくぐるために、敢えて濃霧で視界が効かず、潮流が速く暗礁だらけのキスカ島西側を航行する旗艦「阿武隈」に率いられた第一水雷戦隊。
微速前進では潮流で舵が効かず暗礁に乗り上げそうになった時、木村中将役の三船敏郎が淡々と「両舷ぜんそ~く!我につづけ」と後続艦に発光信号をうたせる場面が素晴らしい。一切の責任は自分にあると明示したのだ。ちなみに特撮は円谷監督。
そして七十三年前の七月二十九日に奇跡が起こった、いや、功名心にはやらず他人の評価を気にしない沈着冷静なヒゲの木村だからこそ奇跡を呼び寄せた。
なんと米軍の完全包囲下にある孤島から、五千二百名の将兵を無傷で救出することに成功して「太平洋の奇跡」と讃えられた。
この作戦を忠実に近い形で映画化したのが、東宝の「太平洋奇跡の作戦キスカ」
終戦記念日が近くなると、テレビ番組で戦艦大和やゼロ戦の特攻映画が放送されることが多い。
俳優たちが目を剥き、口角泡を飛ばして激高すると「迫真の演技」と評され、センチメンタルな情緒に溢れているのが近頃の映画。
私には「男たちの大和」や「永遠のゼロ」なんか、嘘くさいし安っぽくて観ていられない。
ところが「キスカ」の俳優陣は、実際にキスカから救出された士官たちをアドバイザーにしているためか、本物の海軍軍人みたいに紳士的。
誰も感情をむき出しにして激高しないのだ・・・同じ軍艦内で寝食を共にする海軍軍人同士は喧嘩腰で議論なぞしなかったらしいが、このリアリティーは渋い。
主演の三船敏郎の演技も渋いが、山村総やその他の脇役陣の重厚な存在感がいい。
古い映画だけど、ビデオレンタルされているので観て欲しい映画。
日本人なら知っておいて欲しい史実。
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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