娑婆の風・・・大首飾りプロジェクト
細長い円筒形の真ん中に孔が開いた管玉(クダタマ)は、精度のいい孔を開けるのが勝負の分かれ道。
古墳時代には直径3㎜の出土品まであり、その多くは片側から穿孔されていて正に神業。
私の場合は原石を少しだけ大き目に作った四角柱に墨掛けして、超音波孔開け機で直径1㎜程度の下孔を開けてから、リューターという手持ちの回転工具で実測通りの寸法に広げている。その後に開けた孔を基準にして成形・研磨している。
超音波孔開け機は、超音波振動させたニードルに金剛砂を水で流して孔を開ける機械。私のような量産しないヒスイ職人にとって必要ないのに、何故か2年前に急に欲しくなって大枚をはたいて購入したが、微調整が難しくて滅多に使っていなかった。
因みに私が買った超音波孔開け機は安い中国製で、金剛砂の流れが安定せず非常に使いにくく、不良品かと思ったくらい。
そこで金剛砂の流れが微調整できるようにカスタマイズを繰り返した結果、流れが絶妙になってくれてサクサク孔が開くようになった。
機械は自分で工夫して育てるものですなあ。
とっかかりに小さな窪みを掘ってから、超音波振動させたニードルを当てて金剛砂を流して孔が開く仕組み。この機械が無かったら大首飾りの管玉が作れなかったが、使うアテもないのに買ったのは予期するものを感じたのか?無理して買ってよかった。
72点もある大首飾りの管玉は、全て長さも直径も孔の寸法も違うのだけど、最大の問題は長さ20㎜×直径4㎜の管玉。
直径が細くても長さが短いと精度が出やすく、長くなるほど難しいのだ。
直径4㎜のど真ん中に孔が開いた時、「やった~!」と子供のように声をあげた・・・。
作業中は深海にいる感じ。
仕事を終えてフラフラになって工房から出ると、外気が心地いい。
任侠映画じゃないけど、娑婆の風というヤツ。
風が軽く感じるのは夏の兆しか。
投稿者プロフィール

-
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
最新の投稿
災害(輪島漆器義援金プロジェクト・ボランティア・サバイバル)2025年10月20日「自分にできること」・・・能登半島地震ボランティア
糸魚川自慢2025年10月19日大人になった気分デス・・・充電式ブロアーと「あさひ楼」のラーメン
ぬなかわヒスイ工房・ヒスイ2025年10月17日現代の勾玉のつくられ方・・・時代おくれのヒスイ職人の独り言
糸魚川自慢2025年10月13日縄文キッズ養成講座「丸木舟体験会」・・・糸魚川の浜言葉でオモテナシ