働くおぢさんシリーズ「ヒスイ原石カット屋さん」編
ある世界で大変な尊崇を受ける大御所から、水晶玉占いに使うようなヒスイ製丸玉を作って欲しいと頼まれたが・・・。
多結晶鉱物のヒスイは同じ原石の中でも部分的に硬さにバラつきがあり、原石の中から均質な部分を選ばないと丸玉が歪になるので、成否は原石選びとカット前の墨付けが勝負。
注文主を原石販売店のTさんの店に連れて行き、予算に見合った20キロ近い原石を購入。
私の規模のヒスイ職人だと「大割機」は持っていないから、「小割機」でカットできる大きさまで原石屋さんか、カット屋さんでスライスして貰う必要がある。
「大割機」は高価で動力電源の必要なバカでかい機械なのだ。大割機でカットするTさん。
Tさんは「大割機」を持っているので、石目を慎重に観察して大きくカットしてもらい、さらに切断面を観察して丸玉が作れる範囲を特定してゆき、小割機でカットできる大きさまで根気よく二人三脚でカット作業を続けていく。
原石観察と墨付け、丸玉を作る前段階のサイコロ状の正6面体を作れるまでが私の仕事であり責任、そして原石の見立ての技量が如実に試されるのでドキドキする。
孔の開いていない球体を加工するには専門の加工機械が必要なので、正6面体を作った後は甲府の丸玉加工専門の業者に加工してもらう予定。
丸玉加工を依頼するのは高名な伝統工芸士さんだから、キチンとした正6面体を作らないと笑われてしまう。
「大割機」を持っているだけでなく、現場でアドバイスをもらえた上で墨付け通りに正確無比にカットできる原石屋さんの存在は有難い。
大割機でカットした原石を吟味して、この部分は丸玉、勾玉、石笛に向くという分別をして、丸玉完成後に注文主に引き渡す予定。細かく砕けた加工屑も洗浄後に小さなガラス瓶に入れて渡すとお土産用に喜ばれる。
人から聞いた話しだが、大きな原石を知らない業者にカット依頼したら、中間の綺麗な部分が抜けて渡されたなんてこともあるそうなので、信頼が置けて意思疎通が充分にできるTさんのようなカット屋さんの存在は貴重。
今回のミッションが終わったら、Tさんの大好物の恵比寿ビールを持っていきますか!
普通の人に知られていない職業だが、こんな人がいないとヒスイ加工は成り立たない大事な仕事。
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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