長者ヶ原遺跡は「ヒスイ文化誕生の地」なのか?・・・求められる文化情報リテラシー

「世界最古のヒスイ文明発祥のまち糸魚川」なる宣伝文句が観光方面で使われ始めて久しい。

最近は「世界最古の文明は日本の縄文時代」とする人も出てきたが、文明と文化では意味がちがう。

また現在のところは世界最古級のヒスイ出土はフランスのルーベン遺跡から出土した7,000年前の長大な磨製石斧であるようで、その時代の国内にはヒスイ製品は確認されてはおらず、石器つくりのハンマーにつかったヒスイ原石が出土しているだけだ。

キャッチーなコピーで観光客を誘致したい気持ちはわかるが、ヒスイ文明とまでいってしまっていいのだろうか?

でもですねぇ・・・長者ヶ原遺跡のヒスイ加工は4,500年前からであるらしいのだが、考古館の前に「ヒスイ文化誕生の地」とのぼり旗を立てていいのか?
「世界最古のヒスイ製敲石」なら考古学的には問題ないが、しかしこれは長者ヶ原遺跡の出土品ではなく、10キロほど西の大角地遺跡(おがくちいせき・青海区)の7,000年前の出土品ですわ。
それに道具としてのヒスイの使用が文明といえるのか?これが噂の長者ヶ原遺跡考古館に展示された世界最古のヒスイ敲石!
 
文明というなら道具としてではなく、ヒスイ製の装身具や威信材などの「第二の道具」の出現を待たなけりゃならんと思うが、国内最古の装身具は6,000年前の山梨の天神遺跡と富山の小竹貝塚の出土の大珠の未製品で、残念ながら糸魚川ではない。
 
それらの加工地は不明ながら、4,500年前からヒスイ加工を始めた長者ヶ原遺跡でないことは確かなのだが・・・。
世界最古のヒスイ文明の利器?ヒスイ製敲石のアップ!
 
実際に昨年の秋に開催された行政主導の縄文イベントに参加したマスコミの人が、長者ヶ原遺跡が世界最古のヒスイ加工遺跡と思い込んでいたらしく、後から私に取材して事実と異なると知ったそうだ。レッツ情報リテラシー!
ヌナカワ姫関連の情報も然りで、「とりあえず来てちょうだい!」というノリのキャッチーな宣伝文句で大風呂敷を広げては、後からボロが出て困ることになる。
 
糸魚川に来てみてもヌナカワ姫と出雲の関係を物語る遺構や出土品は一切なく、古代のラブロマンスとは真逆な悲劇の伝説を知ってガッカリしたとか、観光のために神話を捏造していいの!女として許せない!と怒っていた女性客もいる。
 
知らない人が鵜呑みにするような紛らわしい宣伝文句に危惧を覚えるのはワタシだけなのか?
 
観光方面で誇大な宣伝をしても、文化財保護課は文化の砦として立証主義的立場を堅持してほしいナ。
 
長者ヶ原遺跡を活性化したいなら、長野の尖石遺跡や井戸尻遺跡を見習ってはどうだ?と、この10年来言い続けてきた。
 
何かイベントをするなら、文化財保護課・企画財政課・観光交流課があつまり、縄文に絡めることはできないかを相談する体制、市民ボランティアを巻き込む動きをしているのだ。
 
これは信州の人々は伝統的に地域文化を誇りにする土壌があり、何代か前の市長が縄文をもっとアピールしろと主導した結果であったようだ。
 
長野県の考古博物館の体験会では、糸魚川のような江戸時代に発明された舞錐式発火法を指導せず、ちゃんと錐揉み式発火法を指導している。
 
何度でも言い続けるが、長者ヶ原遺跡が長野県にあったなら、もっとメジャーになっていると思う。
 
重要なのは行政のリーダーシップ、そして市民の地元文化への熱烈な愛着ではないか。
 
 
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投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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