忘れてはいけない祖父たちの戦争の記憶・・・朝日新聞社「横井正一さんの記録・グアムに生きた二十八年」

・・・生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿(なか)れ・・・
 
太平洋戦争直前に陸軍将兵に示達された「戦陣訓」の有名な一節だが、捕虜となるのは皇軍兵士の恥辱であるので潔く死ねという意味だ。
この示達が多くの悲劇が産み、終戦後もグアム島のせまくて湿気だらけの真っ暗な洞穴で28年間も隠れていた横井正一さんもその呪縛のなかにいた。
 
横井さんの帰国後の第一声が「恥かしながら還ってきました」で、その年の流行語となり、お笑いのネタにもなったと記憶しているが、時代錯誤な生真面目さを笑うのは気の毒すぎる。
 
恥かしながらとは、戦陣訓の呪縛以上に、戦死した仲間とその遺族への偽らざる想いであったのだろう。
 
記者会見の時には笑ってくださいとも要望が出て、物見遊山の人々が自宅に押し寄せたそうだが、横井さんは時代の分断に絶望したのではないか。
図書館の書籍は古くなると処分されるのだけど、スカスカのタレント本を買いそろえるより、本書こそ後世に残すべき努力をして欲しいものだ。工房ギャラリーが落ち着いたら図書コーナーを作って貸し出そうと考えている。
 
 
 
 
 

投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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