自殺率が世界一高く、中国人から蝗軍と呼ばれた皇軍の現実・・・吉田裕著「日本軍兵士」正・続

「自殺率が世界一高い軍隊」と、ほかならぬ憲兵司令部が認めていた日本軍の実態を、将兵の衣食住などの観点から検証したのが本書。
吉田裕著「日本軍兵士」正・続がベストセラーになったそうだが、アジア太平洋戦争を礼賛する極右政党が勢いをもっている昨今に、こういった本を買ってくれる人がいるのは救い。
 
体重の50%をこえる重装備で毎日40~50キロも歩かされ、各自が飯盒炊飯しながら野営する行軍が常態化していて、上官の洗濯や繕いもの、炊事といった雑役を担わされた下級兵士たちは、寝る暇もなく心身ともに疲弊して、苦役から逃れるために兵士が自分を撃つ自傷行為も少なくなかったそうだ。
 
不平不満の捌け口を新兵イジメと、戦地での強姦・略奪に求めるタチの悪い古参兵もいたし、将校がリーダーとなり友軍から食料を奪う強盗団までいたそうだ。
また兵站を軽視した日本軍は戦地での食料を「自給自活」させることも多く、集落の食料を強奪し、民家を壊して飯盒炊飯の薪にし、また火をはなって立ち去った部隊もいて、日本軍が通過した後は蝗(イナゴ)の群れに襲われたように何も残らないと、中国人は「皇軍」をもじって「蝗軍」とさげすんだ。
 
こういった行為は指揮官のモラル次第であり、もちろん宮崎繫三郎中将や今井均大将のように乱暴狼藉を厳禁した立派な指揮官もいる。
 
夏目漱石は「それから」のなかで「・・・むりにも一等国の仲間入りをしようとするのだから、あらゆる方面に向かって、奥行きをけずって、一等国だけの間口を張っちまった・・・」と書いているそうだが、日本軍にそのまま当てはまる慧眼だ。
 
「太平洋戦争は悪いことばかりでなく、アジアを欧米の植民地支配から解放した点は評価できる」と参政党サポーターが言っていたが、開放したはずのアジア諸国で反乱が相次いだ史実を知らず、史実を都合よく解釈した歴史観だろう。
いまだにアジア・太平洋戦争を「アジア開放の聖戦」と賛美する人に直視してほしい現実。
 
 
 
 

投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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