読まずに死ねるか!快男児松浦武四郎の生涯・・・河治和香著「松浦武四郎一代 がいなもん」

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以下本文!

幕末の蝦夷地探検家にしてベストセラー作家、憂国の志士、北海道の名付け親、稀代の好古家、アイヌ文化記録者など、多彩な面をもつ松浦武四郎の伝記小説「松浦武四郎一代がいなもん」が待望の文庫化!・・・実は2年前に文庫になっていたようだ💦

蔵書が多すぎるので場所をとる単行本は買えず、文庫化を待ち望んでいたら、京都の先輩が読んで面白かったとメールがあり、さっそく地元の本屋に注文。落語のような会話と軽快なテンポで面白いのなんの。

武四郎やアイヌの方々との縁は、7年前に明治維新150周年と武四郎生誕200周年の節目が重なり、記念事業で武四郎の愛蔵品「大首飾り」を複製させてもらってから始まった。

玉類243点を連ねた「大首飾り」の見積もりと資料収集、原石あつめに半年、製作に半年かかった。すべての複製を終えて工房の外にでた時、夕闇せまる空の高さが目に沁みた。一世一代の大仕事のプレッシャーに身が縮こまっていたようだ。現在の「大首飾り」は「松坂市立松浦武四郎記念館」に展示されている。

そんなことがあったので、当時ベストセラーになっていた本書の著者の河治和香さんから、新潟日報で連載中のエッセイ「お江戸じょんのび」の取材をしたいと連絡をいただいたが、都合があわずにお会いしたことはなく、本書を読んだ機会に連絡して交流が再開した。

ちなみに「がいなもん」は伊勢弁で偉大なという意味らしいが、糸魚川弁だと元気者という意味だ。

本書は武四郎と親交のあった絵師の河鍋暁斎の16歳の娘の豊が、最晩年の武四郎から、折々に昔ばなしを聞かされる形式で、自然な流れで動乱の幕末から明治の時代へと続く幅広い交友関係、アイヌ民族のおかれた立場、武四郎の数奇な人生が詳らかになっていく。

その当時にNHKでも武四郎を主人公にしたドラマ「永遠のニシパ」が放映されたが、荒唐無稽な内容と史実とはずいぶんとちがう武四郎像にガッカリさせられた。

しかし本書の武四郎像は偏らない中庸さと並外れた好奇心と行動力をもち、民族や政治信条や身分にかかわらずに誰とでも分け隔てなく接した、飄々とした自由人として描かれていて、わたしのイメージ通り。

唯一の武四郎の写真が大首飾りを身に付けた、亡くなる前年の70歳の写真。本書によると、この頃の武四郎は終活に意欲を燃やし、蒐集品を売却する先や葬儀の式次第などを微に入り際入り書いた遺言をつくっていたが、膨大すぎて本にまとめたので周囲が呆れたそうだ。

「大森貝塚」を発見したモースに「大首飾り」を自慢する場面で、「糸魚川の翡翠の勾玉」という言葉を目にした途端に涙腺崩壊・・・。

「大首飾り」に向きあい、不安まじりの高揚感のなかで、下手は下手なりに頑張った1年間が蘇ってきたのだ。

作者の特権で納品前に武四郎コスプレの記念撮影したら、性格や趣味嗜好が武四郎と似ていると自覚はしていたものの、関係者から武四郎に瓜二つと評判w

実在する登場人物たちの江戸っ子ぶりもいいので、本書の宣伝のためにちょっとだけネタばらし。

雑踏で武四郎を見つけた高名な漆芸家の柴田是真が、「しめたぞ しめた しめこのうさこ」と、強引に馴染みの蕎麦屋に誘う。

そこに是真が毛嫌いする河鍋暁斎がはいってきて、間を取り繕う武四郎が一緒にどうだね?と声をかける。

「なんでぇ・・・」とまどう暁斎を尻目に、是真が無言で舐った箸を蕎麦に塗り付け「お前にはやらん」と意思表示する場面など、立川談志の落語のようで大笑いした。

是真はこのあと、暁斎の自宅に蕎麦を出前させる粋なはからい。

江戸っ子だねぇ。

河治さんは柴又のお生まれだそうだから、寄席演芸も好きなのかな。じっくり話してみたいものだ。

大久保利通から得難き奇男児と評された、痛快無比の武四郎一代、読まないのは損というもの。

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投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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