越後に雪男がいた時代・・・二元論ではない「北越雪譜」の世界観
200年前の越後には雪男がいたし、冬山で遭難した男が冬眠中のクマに助けられた不思議な話しなどが、北越雪譜(ほくえつせっぷ)で紹介されている。
真実と嘘、正義と悪いうような昨今の流行りの二元論ではなく、非日常的なできごとを「不思議なこともあるものだ」と迎え入れ、モノの哀れを感じたり、自戒とする謙虚さが好ましく思う。

現代に蘇った越後の雪男。
北越雪譜のみならず、例えば今昔物語などにも不思議な逸話が多く描かれているが、昔の人は二元論でジャッジしなかったからこそ、不思議なできごとと共存できていたのではないか?
昭和の落語名人、桂文楽の伝記「あらばかべっそん」にはキツネに化かされた体験、三遊亭圓生の「寄席育ち」にはタヌキ囃子を聞いた体験が綴られており、明治生まれのご両人とも「不思議なことがあるものだ」と語っている。

白黒をハッキリさせる二元論ではなく、グレーゾーンを内包できる度量があったからこそ、杜の中でトトロに逢えたし、闇に潜む真っ黒クロスケを目撃できたのではないか?
暗闇に跋扈する魑魅魍魎を恐れ、時に雪男やトトロに出逢えた豊かでおおらかだった時代に憧憬を感じる。
江戸時代のベストセラー、北越雪譜はユキとヒトの物語。

雪国の暮らしの紹介にとどまらず、雪にまつわる不思議な話しも同列に描く眼差しが柔らかく心地よい。
疲れた時に読むワタシの処方箋なのデス。
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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