或るご婦人のヒトとヒスイの物語・・・糸魚川翡翠展2022

個展2日目、昨年の個展で勾玉ペンダントをお求めになったご婦人が、ブレスレットに仕立て直して毎日身に着けています!と見せてくれた。

歩きながら、バスに揺られながら、指で撫で、掌でにぎにぎして愉しんでいるそう。絹紐の色や太さ、長さの調整など、工夫も愉しかったのではないだろうか。

 

自分がつくった勾玉が大事にされている、愛されている・・・泣けてくる。

5億年前に誕生して、太古の地殻変動で地上に露頭したたヒスイが崩落して川に流れ、砕けて磨かれ誰かに拾われた。
 
そのヒスイを売った人、買って勾玉に加工した人がいて、根津のギャラリーで買い求めたご婦人が、自分好みにカスタマイズして毎日にぎにぎしている、ヒトとヒスイの物語。
 
ヒスイは時を流れて物語を運ぶ舟のように感じる。ヒトもまた物語を運ぶ旅人。希少鉱物というだけで尊いんじゃない。
 
ヒスイに出逢って心を動かされたヒトがいてこそ、物語が生まれる。
 
本居宣長はその心の共鳴を「もののあわれ」と定義し、松尾芭蕉はヒスイ原石が勾玉に生まれ変わることを「造化」と呼んだ。
 
トークイベントではそんな話もできたら幸い。
 
 
 

投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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