「江戸之華」・・・広重の意外な家業
落語好きだから江戸の火消しの実際と、防災史を調べて見つけたのが、20代の広重が描いた「江戸之華」なる21枚からなる火事の絵本。

その中で「四十八組之内壹番組いよはに万の五組火がか里の図」の、リアルさに圧倒された。
纏(まとい)のバレンが火災旋風で横になびき、棟の上の人物たちが火勢を注視する後ろで、火消し人足たちが屋根瓦を落としている静と動の対比がすばらしい。
リアルなのは広重は、主に江戸城を守る常火消(じょうびけし)の同心として、火災の最前線で指揮を執っていた旗本だったからだそうだ。現代なら消防署長の家系だった訳だ。
ドラマや落語に出てくる火消しは、「いろは四十八組」と呼ばれた各町内に点在する町火消ばかりだが、普段は足場や基礎工事などの土木作業をしている町内の建設会社のような存在であり、町内のもめ事の仲裁や冠婚葬祭なども仕切っていた。
人望がありキップ(気風ネ)のいい町火消しの頭ともなるとモテたらしく、落語「三軒長屋」「茶の湯」「寝床」の主要登場人物としても引っ張りだこ。
対して常火消は消防署に相当する火消し屋敷に、臥煙(がえん)と呼ばれる火消し専門の人足を住まわせた官営組織の違いがある。
普段から町方と密接に交流していた町火消とちがい、火事がない時の臥煙は火消屋敷でバクチして遊んでいるような、命知らずの乱暴者だったかから評判は悪かった。
落語「火事息子」は、火事好きが嵩じて家出して臥煙となった商家の若旦那が、実家の火事を消すために屋根を飛んでやってくる人情噺で、冬でも半纏を羽織った裸フンドシに白足袋だけの姿で、全身イレズミだらけになった息子を嘆く父親の描写があるが、この姿で消火活動をするとなると火傷や人身事故も多かったと思う。だから刹那的に生きていたのかな。
広重の生家は、八重洲に火消し屋敷をあたえられていたそうだから、臥煙と同じ屋根の下で暮らしていたのだろう。
臥煙は一本の長い丸太を枕にして広間で雑魚寝しており、火事になると枕にしていた丸太を木槌で叩いて起こされたそうだが、友人にやってもらったら、当たり前だけど脳ミソがビリビリ震える荒っぽさだったw。何でもやってみる派!
広重も火事ともなると「やろうども!置きやがれ!早くしろい!」と臥煙たちを叩き起こし、火事場に急行する勇みな男だったと想像するが、息子が成人してすぐに若隠居して絵師になったらしい。
北斎より下に観ていたのだが、この時から広重も好きになった次第ですw
寒くなってきたので火の用心の啓発活動のつもりデス。
#火の用心 #江戸時代の消防 #火消人足 #火消しの親分だった広重 #常火消同心だった広重 #江戸之華
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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