黒澤監督作品「赤ひげ」その2・・・ピンスポットライト

なんども観ているうちに、この映画は目にあてるピンスポットライトのつかい方が抜群に巧いことに気付いた。

ピンスポットライトはピンスポと呼ばれる小型のスポットライトのことで、映画では俳優の目に当ててキラキラさせたりする照明のこと。

例えば、大雨のなか、子連れで家出した、おくに(根岸明美)が長屋に案内され、部屋にはいった時の光る目は、安堵と不安が入り混じった、子供を守りたい一心の母親の目。ものすごく好きな場面だ。

高熱で寝込んだ女郎屋の娘(二木てるみ)がガバッと起き上がった時に光る目は、虐待されつづけ、生存本能で生きるイキモノの目で、まるで妖怪のようだ。

しかし、逆光なのに人物の後ろがすぐ土壁だから、よほど時間をかけてライティングしてたのだろう。黒澤組では照明のセッティングが終わるまで俳優はセット内で待機させられていたのでカツラや衣装から湯気が出たとか、加山雄三さんが本番中に居眠りしてしまったなどの逸話もある。

そして冒頭の方で、赤ひげが保本(加山雄三)をジッと見入る光る目は、世間の荒波に巌のように立ちふさがり、貧しい人々を護る覚悟をした者が、真贋や本質を見分ける時の目。

この場面、なんだかドストエフスキーの肖像を連想した。若き日の黒澤さんはドストエフスキーを耽読していたそうだから、イメージを重ねたのかも?(証明しようもない妄想ですケド)

「ウエスト・サイド物語」などは主要人物がアップになると、少女漫画のように目がキラキラしているが、こちらは夢物語っぽく演出したピンスポだが、人物の心情を際立たせているところが、クロサワ映画のすごさ。

余談だけど、この映画を最後に三船敏郎はクロサワ映画に出なくなるが、ケンカ別れではなく、「もう三船君は撮り尽くしたから」だそうだ。

三船さんはこの後もたくさんの映画やテレビドラマに出演しているが、「無法松の一生」は別としてクロサワ映画ほどにはキャラが立っていない。いくらいきんでも、ピンスポで目が光ってないし、大道具に小道具、脚本や演出もちがうから無理もないけど。

やっぱり黒澤監督なくして世界のミフネはなかったし、世界のクロサワも三船敏郎なくしてはなかったのかもしれないですネ。

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投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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