現代の勾玉のつくられ方・・・時代おくれのヒスイ職人の独り言

販売店さんが販売する勾玉は、基本的に同じ形と寸法で統一された、バレル研磨機で仕上げた量産品が大多数だ。

安かろうの業者に頼むと、ヘンテコで傷だらけの勾玉に仕上がってくるからと、最近は一点物を専門にしている、わたしにも依頼がくるようになった。

販売店さんから与えられたのが、量産するための円盤状のダイヤモンドヤスリ。

左が勾玉の背部の丸みの整形用で、右が腹部の凹みを整形用で、これを回転させてヒスイを当てれば、誰でも短時間に同じ規格の勾玉をつくることができるという代物で、1週間で50個、70個の勾玉をつくる人もいると聞く。

こんな感じで腹部の凹みを削り、面取りもしてしまう。

同じ工程を50個分も続けるなんて、1個づつ仕上げて、つくる悦びを感じたいわたしには、想像できない根気のいる仕事。

両頭グラインダーに取り付けて加工してみたが、いかにも「勾玉のカタチになってりゃいいんでしょ!」といった感じの、側面が扁平な勾玉になってしまうのが、面白くない。

これでは創作ではなく、工業製品つくりの労働だと、身体感覚がブレーキをかけてくるのだ。

こちらは背部の丸みを削り出す特殊工具で、水を点滴しながらつかうので、ペットボトルで自作。

マグネットバーで位置を調整し、小さない水栓金具(3,000円の投資!)で水量調整できるように工夫

パワーストーンの効能を宣伝すれば、量産勾玉でもありがたがって買ってもらえる。

芸術家や霊能者の玉匠がつくった特別な勾玉と謳えば、量産勾玉でも高価で売れるのが現実で、今どきは販売する人も、勾玉を買うお客様もつくられ方に頓着しないし、手間暇をかけて精密な勾玉をつくってもその分を価格で評価してもらえないのだ。

ヒスイの個性に合わせて様々なカタチ、サイズの勾玉つくりをしているわたしとは異世界のつくり方、売り方だから、これまで通りに特殊工具なしで、時間をかけて納得できる仕事をすることにした。

その代わりに傷取り研磨の状態で引き渡し、あとは販売店さんがバレル研磨機に放り込んでピカピカに磨いてもらうことになった。

自慢ではないが、わたしの勾玉は傷取り研磨の状態でも、売り物になるくらい綺麗だと、同業者から言われるのが自慢だw。

同業者と話していると、職種は同じでも内実は異業種と感じることがよくある。

時代おくれのヒスイ職人が、ため息まじりの独り言・・・おえんのう。

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投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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