大国主に殺されたヌナカワ姫の夫神・・・市野々の将軍社
インフルエンサーの滝沢泰平さんが、わたしが「悲劇のヌナカワ姫伝説」の検証をしていることを講演会で話してくれたらしく、女性グループが話を聞きたいとガイドすることになった。
この際に、以前から気になっていた以下の伝説をフィールドワーク!
「奴奈川姫の夫神は松本の豪族で、姫に懸想した大国主と争いになり、黒姫山の麓にある鍾乳洞の福ケ口の戦いに敗れ、中山峠を敗走して市野々で首を刎ねられた。夫神を埋葬したのが市野々の将軍社である」
出典は大正時代編纂の「西頸城郡誌」。

ネット上には将軍社の位置情報はないが、とりあえず市野々へ行ってみた。市野々は市街地から車で20分ほどの、海谷渓谷の麓にある限界集落だ。

農作業をしていた老人に教えてもらった場所は、幕末に地元出身の羅漢和尚が建立した「三十三体観音」のある場所だった。

周囲には苔むした墓石が点在していたが、それらしき碑や祠を探し出すことはできず、現在の将軍社は小字としてのみ残っているようだ。

クマが檻に入ったばかりだから気を付けて!と注意されたし、いたるところに真っ赤に熟した柿が放置されていたので、ガイドするには危険な場所![]()
この伝説を検証すると、夫神が「松本の豪族」とあることから、松本は室町時代には深瀬と呼ばれていたので、比較的にあたらしい口碑であることは判っていたし、わざわざ人里離れた険しい山奥にある福ケ口で戦うのも現実的ではない。

神さまを祀った祠であるようだが、江戸期のものではないだろうか。ヌナカワ姫の時代は3世紀の弥生時代後期~古墳時代に比定されているので、ヌナカワ彦を後世に祀ったのが将軍社だろうか?
また信州へ塩を運ぶ「塩の道」の中山峠が出てくることから、信州へ塩を運んでいた歩荷たちの昔ばなしが口承された、或いは元ネタに混じった可能性が高いと思う。

家墓のエリアはかなり広く、石を置いた墓石の周囲も広いのは土葬していたからか?地下に眠る人に怒られないように、置かれた石を目安に慎重に歩いた。
大国主に殺され、忘れ去られたヌナカワ姫の夫神とは?
黒姫山に座すと伝わる、黒姫・ヌナカワ姫・ヌナカワ彦の三座の神のひと柱、ヌナカワ彦であったのかも。
現在の奴奈川神社の御祭神はヌナカワ姫と八千鉾神だが、かっては八千鉾神ではなくヌナカワ彦であったとする説もある。
が、現在はヌナカワ彦を祀る神社はない。

将軍社があったらしき周辺には中世くらいの墓石が崩れていた・・・諸行無常。
もちろん神話や昔ばなしと史実はイコールではない。
しかし人々に語り継がれてきた民間伝承は、地域の文化として大事に扱うべきものだと思う。
ヌナカワ姫の夫とされる松本の豪族・ヌナカワ彦は実在しなかったかも知れないが、人々の記憶の中で気の毒な神様として慰霊され続けていたことは事実。
ヌナカワ姫の悲劇の伝説を知って慰霊したいと訪ねてくる人が多いのだが、歴史から消え去りつつあるヌナカワ彦(?)も慰霊してやってくださいな。

左がヌナカワ彦、右がヌナカワ姫。おさるのジョージは個人の趣味デス( ´艸`)
そのために工房ギャラリーには、ヌナカワ彦・ヌナカワ姫と銘打った勾玉首飾りを展示してあるのよ。
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投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。 
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