「赤ひげ」その1・・・クロサワ映画

*Facebookの映画コミューンに投稿しはじめたら、最初から伝説的投稿とやら、オールスターなんとかになったので、映画好きの人のためにブログにも転載していきますぞ。

以下はその内容。

黒澤明作品でいちばん好きな映画が「赤ひげ」で、黒澤監督が追求しつづけた、望遠レンズを絞ったパンフォーカス(画面全体にピントがあった映像)の集大成と言えるのではなかろうか。

撮影所の照明ライトを独占して停電になった!強烈なライトに照らされつづけた俳優のカツラや衣装から湯気が出た!などが語り草になっているが、それらエピソードを生み出したベストショットが、最初のエピソードのダイキリール(膵臓)癌で死の床にある六助役の、藤原鎌足さんの横顔だと思う。

「用心棒」でセリフなしの気がふれた名主の演技は、黒澤監督が「やっぱ鎌さんは巧い!」と唸らせ、ワンテイク撮影だったそうだが、「赤ひげ」でもセリフなしで「荘厳な臨終」を演じていて、この役は鎌さんしかいない!とキャスティングしたと想像しては愉しんでいる。

パンフォーカスはレンズのピントを絞った暗い画面になるので強力な照明を当てることになるが、絶対にまばたきしてはいけないと厳命されたアップに耐えきった藤原さん。

この映画はどの画面を切り取っても、一幅の絵画のようで美しい。

また六助の娘、おくに役の、根岸明美さんの演技が鳥肌もので、その場にいるかのように胸が締め付けられる。

何も語らず亡くなった父親の過去を語る長い場面をワンカット撮影すると要望され、根岸さんは鬼気迫る演技で見事にこたえた。少女漫画のように瞳がキラキラしているのは、ピンスポットライトを当てているためで、これで目を悪くする俳優も多かったと聞く。黒澤監督自身も目を悪くして、敬愛するジョン・フォード監督のアドバイスでサングラスをかけるようになったそう。

この場面も黒澤監督が唸り、ワンテイクで撮影が終わったそう。

「生き物の記録」「どん底」「どですかでん」などのクロサワ映画に出演した根岸さんは、「赤ひげ」だけは観たことがないそうだが、試写会でおくに役の心情が蘇り、映画と同じく嘔吐しそうになったからと本人は語っている。

そしてですね、戦後に実際にあった「アナタハン事件」を映画化した「アナタハン」を観た時に、妖艶な主演女優さんの顔に見覚えが・・・調べたら、なんと若き日の根岸明美さん!

SKD出身のグラマー女優が、演技派に転じていたのですねぇ。

数あるクロサワ映画の中で、わたしには「赤ひげ」がちょっと別格に感じて、黒澤監督が追い求めてきた美意識が、共に撮影してきたスタッフ、キャストに浸透して、見事に咲いた大輪の花、と評価している。

投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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