勾玉作りに完成は無い・・・目指せ、真名井勾玉!
人生の節目、新しい人生の門出の勾玉を作って欲しいと言うご注文。
どんな人生を送ってきた何歳くらいのお客様だろう・・・。
予算とお客さんの人となりを想像して原石を探した。
古今作られた勾玉の最高傑作が、出雲大社本殿裏の真名井遺跡出土の勾玉。ヒスイの質も素晴らしいけど、勾玉自体が神々しい。何時かこんな勾玉を作ってみたいと切に願うのだ。
私にしてはかなり佳いヒスイ原石を選んだが、どこをカットしてどんな勾玉を作るのか?
原石を観察して、作るべき勾玉の大きさと形状を模索すること数週間。
原石のカットすべき線が見えたら作業は早いけど、人生の節目の勾玉・・・これは結構なプレッシャー。
当初、作ろうと思った形状はもっとスマートな形状の予定だったけども、原石を削っているうちに「もっと削れ!」「もう削らなくて結構!」と、胸の中にヒスイの声が響いてくる感じがして、どうしてもスマートな形状にできなかった。
もっと削った方が格好いい!という自己の想いとの戦いをしながらだから、迷った時には休憩したり別の仕事をして保留である。
毎度の事ながら、私のヒスイ加工はえらく時間がかかるのだ。
完成した勾玉は、「人生の節目・新しい人生の門出」というキーワードに影響された訳ではないのだけど、ぷっくらとした胎児のような形状になった。
微妙な曲線の連続した造形・・・これが意外にも難しく、光にかざしてみると不連続であったりする。
勾玉作りは同じ形状・寸法を1時間に1個の割合で量産できないとプロじゃない、と指摘された事があるのだけど、私には無理な芸当。
作れば作るほどに勾玉作りが難しくなり、時間がかかるようになってきた。
だから私は永遠のシロウトという事になる。
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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永遠の素人
良いですね!
ど素人が聞くと、1時間1個に同じ寸法の勾玉を作るのであれば、寧ろそれはロボットにやらせれば良いのでは?と思ってしまいますね!
命や魂を連想させる勾玉を量産だなんて…
それがプロの証だなんて…
泣けてきます。
まるで効率や生産性を重視する余り人間の個性(良いところ悪いところ含め)を軽視してきた現代日本の象徴のようです。
もの言わぬヒスイの声
コメント有難うございます。
縄文以来続いていたヒスイの存在価値は、尊いチカラを象徴するもので貴人と言えども簡単に入手できるものではなく、勾玉も神秘的な呪力を持つ祭器であったと思うのです。
勾玉は祭器か?お気軽なアクセサリーか?
物言わぬヒスイは、作り手と求める人、更に現代社会の在り様を問いかけて来るように思います。