訳知り顔が助かるイノチを犠牲にする・・・ハザードマップを妄信してはダメな訳
元消防所長で地域の防災リーダーという男性が、ハザードマップの被害想定をこえた避難をしなくて大丈夫と力説していたが、わたしはハザードマップを避難の最低ラインと捉え、想定外を想定しないと危険だと思っている。
例えば海底活断層の地震で発生する推定津波高さが7mであれば、それは大気圧1013ヘクトパスカルを基本値とした海面上昇の推定値だ。
大気圧が1ヘクトパスカル下がると海面は1センチ上昇するそうだから、国内観測史上最低の907ヘクトパスカルの大型低気圧だと、気圧による海面上昇だけで1mをこえ、ここに風の吹き付けによる波浪が加わった「高潮」となる。
「高潮」の危険さは伊勢湾台風で5,000名もの犠牲者をだした事例を出すまでもない。

*図はTOPPANフォールデイングより借用(https://www.holdings.toppan.com/ja/bousai/shiru/03_17.html)
大型低気圧の高潮で津波がきたら?それが春先の雪解けの増水時や線状降水帯の集中豪雨の真っ最中だったら?
もちろんハザードマップの想定高さをこえる津波がやってくる。
また平均海面からどれだけ海面が上昇するのかを意味する「津波高さ」より、内陸の到達点を意味する「遡上高さ」こそが被害の程度を左右するから、現実にはハザードマップは暫定的な参考値に過ぎないとわたしは考えている。
現に「能登豪雨災害」でも、地震による隆起で配水勾配が設計値通りでなかった可能性もあるだろうが、線状降水帯による想定をこえた集中豪雨と上流部の地滑りの土砂流入もあり、想定浸水被害エリア以外でも床上浸水しているではないか。
件の男性にこういった想定外の問題を指摘しようとしても聞く耳をもたず、防災計画に元ずく避難訓練さえしていれば大丈夫の一点張り。
東日本大震災の時は、津波から避難しようとする人たちに、チリ沖地震の時はここまで津波はこなかったから逃げなくて大丈夫とする老人の意見を聞いた犠牲者がいたと聞く。
明治と昭和の三陸沖地震の時も、冬に津波はこないとか、夜には津波がこないなどと、根拠のない憶測をいった老人の一家が犠牲になっている。
思考が硬直化した老人の訳知り顔が、助かるはずの命を犠牲にしてしまった災害史の例はたくさんあるし、激甚災害の備えに絶対大丈夫はないと思うけどな。
絶対大丈夫がホントなら、戦艦大和は沈まなかったし、戦争に負けなかったよネ。
投稿者プロフィール

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ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。
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