名作映画のリメイクはねぇ・・・映画「椿三十郎」

黒澤明監督作品「椿三十郎」の森田芳光監督のリメイク版を恐る恐る観たら、三十郎役の織田裕二が着ている赤い紋付が気になり、最後まで作品に没頭できなかったw

だいぶ経ってからハタと気付いたのは、落語「抜け雀」で、旅の絵師が着ている、くたびれた黒紋付の様子だ。

「着てるのは黒羽二重がもう年数が経っちゃって、焼けてしまって赤くなっちゃって、だから、赤羽二重ですな。 紋が白いやつが汚れちゃってるから、ェェ 赤羽二重の黒紋付てぇのを着てましてぇ」とあり、もしやこの状態が赤い紋付の正体?

(鈴々舎馬桜師匠から教えていただいた志ん生師匠の速記)

黒紋付は生地を朱か藍で下染してから黒に染めて色に深味を出すので、古びて退色すると下染めが透けてくる。だから朱下地だと羊羹色に退色したりする訳ですネ。

黒澤組の時代劇は、俳優が衣装を自宅に持ち帰り、風呂場で手洗いや軽石でこすってエイジング加工させていたと聞くが、「椿三十郎」の黒紋付にもヨレヨレ感やほころびがありますねぇ。

リメイク版では、いくら古色っぽく染めても、ほころびや、ヨレヨレ感がないからニューウエーブ紋付?と思ってしまったワケ。

森田監督はオリジナルの脚本を、「あれだけ完璧な脚本をどうやって変えるんですか?変えてしまえば逃げることになる。演出でアレンジするしかない」と、そのままつかい、台本に「絶対に越える」と書いて意気込んでいたそうだ。

しかし、黒澤明はその「完璧な脚本」を映像化するために、金に糸目を付けず衣装や大道具、照明とカメラなどすべてにおいて完璧だったし、誰も真似できないテンポのある速度感を生む演出と編集マジックあってこそのクロサワ映画だから、同じ台本を換骨奪胎して「絶対に越える」のは無理がある。

そしてできたのが、ニコニコ笑顔のさわやかな「椿三十郎」・・・オリジナルの三船敏郎はニコリともせず仏頂面。

クロサワ映画のリメイクでは、戦国時代の時代劇「七人の侍」の舞台を西部劇にして成功した「荒野の七人」の例もあるので、いっそのこと森田芳光らしく、織田裕二主演の刑事ドラマ「踊る捜査線」の中で、ライトコメデイタッチのオマージュ作品にした方がよかったのでは?「の、ようなもの」や「家族ゲーム」みたいな軽い感じでと、老婆心ながら思う。

最大の見せ場のラストの決闘シーンは、オリジナルのロングショットのワンカットに対して、リメイク版は細かいカット割りとスローモーションに変えているが、オリジナルの緊迫感に遠く及ばず、「変えてしまえば逃げることになる」をやっちまっている。

オリジナルの決闘場面は、スローモーションでも刀が見えない、本物の武術家なみの三船敏郎の卓越した殺陣と、ロングショットのワンカットであってこそのリアルさで、なんど観ても息を吞んでしまう。助監督時代の黒澤明が山本嘉次郎監督の「馬」の第二監督として、主人公と馬が別れる場面を撮らされた時、暴れる馬をアップで繋いだラッシュを観た山本監督からダメ出しされ、躍動感はロングショットでないと表現できない学びになり、山本監督を師匠と慕っていたそう。

ちなみに「椿三十郎」撮影時の三船敏郎は41歳で、織田裕二は40歳のほぼ同い歳。

比較されることがわかっていながら、名作のリメイクに挑んだ森田芳光監督と織田裕二は勇気があると思う。

そのチャレンジ精神は評価しますヨ。

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投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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