刑事と女スリの掛け合い・・・黒澤明作品「野良犬」の名場面

「野良犬」をはじめて観たのは、黒澤明監督40周年の記念イベントで、巣鴨の三百人劇場で全作が上映された19歳の時で、真夏の取調室で、ベテラン刑事役の志村喬が、女スリ役の千石規子を取り調べする場面の、演技バトルに驚愕した。

暑い真夏のある日、三船敏郎演じる若い刑事が満員のバスの中でピストルをスラれ、強盗につかわれる事件がおこる。1949年に公開され、戦後間もない東京の風景が描かれた、サスペンス映画の名作

三船敏郎が復員兵の姿で闇市を歩きまわる場面は、助監督の本多猪四郎が小型カメラで隠し撮りをしてドキュメンタリータッチになっていて、本多は本作の後に監督に昇格してゴジラ映画を撮って世界的に有名になった

志村が、溶けかけたアイスキャンディーをじゅるじゅる、じゅる~と下品に音をたてて舐め、だらしない姿勢と言葉遣いをしているのは、ベテラン刑事らしく、すれっからしの女スリにラポール(心理的同調)をとっているのだろう。

志村は、アイスキャンディーを食べ終わるとタバコをすすめるのだが、火をつけてもらった千石は、やはり下品な感じでチュッパチュッパと音をたててタバコを吸い、ブワ~と大量の煙を吐出したあと、舌なめずりをするのだ。

丁々発止の掛け合いが凄い!巧い!

生真面目で一本気な刑事役の三船敏郎との対比は、これぞ黒澤監督が登場人物の心情と真逆なBGMを流すことで、深味を出していた対位法の演技版で、物語に緩急を生んでいる。

わたしの知る限りは、黒澤監督が「生まれっ放し」と呼んでいたのは、加山雄三と千石規子の二人で、育ちのよさが素直な演技を生んでいるといった意味の誉め言葉であったようだ。

三船敏郎だけでなく、黒澤作品は名脇役に支えられている訳ですね。

#黒澤明 #野良犬 #志村喬 #千石規子

投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です