家族を描いた剣豪映画・・・「たそがれ清兵衛」その2

長年に渡り家族を描いてきた山田洋次監督だから、本作も家族が丁寧に描かれていて、子役の自然な芝居が実にいい。

虫かごつくりの内職を手伝う姉妹。その奥に呆けた老婆の寝姿が見えて、家族の温かさが伝わってくる。

丹波哲郎演じる大叔父から後妻をもらうことを勧められた清兵衛は、子供たちに「おかあはんがほしいか?」と聞くが、顔を見合わせてほしくね、と答える姉妹。リンゴのほっぺに着古した着物と乱れた髪のリアルさよ。

しっかり者の長女の萱野、天真爛漫な次女の以登のコンビは、「隣りのトトロ」の姉妹と同じで微笑ましい。

萱野が針仕事をしながら論語の素読(音読のこと)をする場面では、声明のような節をつけていて、さもありなんと感じ入った。
これまで観てきた映画では「師・いわく・学びて時に・・・」と文節ごとに区切って音読していて、こんな描き方は映画史上初ではないか?

姉妹が学問所に通う場面では、おっしょはん(お師匠さま)の自宅の玄関からではなく、縁側から入るのだが、小柄な以登が這い上がる場面の健気さ、いたいけさに唸ってしまう。

こんな微細な描写の積み重ね、冗長に過ぎないさりげない演出が、本作が剣豪映画に終わらず、普遍的な家族愛を描いた映画のリアリティを生んでいるのだろう。

大人になった以登を岸恵子が演じていて、明治期に故郷の清兵衛の墓参りをするラスト。
天真爛漫な少女が立派な夫人に成長したのだから、泉下の清兵衛は喜んでるよな・・・清兵衛は幸せ者、と感じた。

#たそがれ清兵衛

投稿者プロフィール

縄文人見習い
縄文人見習い
ヒスイの故郷、糸魚川市のヒスイ職人です。
縄文、ヒスイ、ヌナカワ姫の探偵ごっこをメインにした情報発信と、五千年前にヒスイが青森まで運ばれた「海のヒスイ・ロード」を検証実験する「日本海縄文カヌープロジェクト」や、市内ガイド、各種イベントの講師やコーディネーターをしています。

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